顎関節症、
MRONJ,ARONJについて
顎関節症とは?
耳の前方にある関節を、顎関節(がくかんせつ)と呼びます。
顎関節症は何らかの原因により、顎関節周りに痛みを生じたり、口が開かないなどの機能障害が起きている状態です。
近年では、日本人の2人に1人が顎関節症を経験するとも言われており、とても身近な病気となっています。
症状が軽い場合は、特別な治療をしなくても自然に改善に向かい症状が治まることもありますが、日常生活に支障があるような場合には早めに受診することをおすすめしています。
顎関節症になる
主な原因
- 歯ぎしりや食いしばり
- 食事を片側ばかりで噛む癖がある
- 1日中ガムを噛んでいる
- 頬杖をつく癖がある
など
顎関節症の原因は様々ありますが、上記のような生活習慣における癖や精神的なストレスなどが重なることで、顎の関節に過度な負担がかかり発症するとされています。
顎関節症
セルフチェック
※以下のような症状に覚えがある場合、顎関節症の可能性があります。
- □ 口を開けて指が縦に3本入らない
- □ 起床時に顎の周りに疲労感や違和感がある
- □ 口を開け閉めすると音がする(カクカク等)
- □ 食事をすると耳の付け根やこめかみが痛む
- □ 肩こりや頭痛、耳鳴りがする
上記のような症状は、少し様子を見るうちにおさまる場合もあります。
しかし、肩こりや偏頭痛、音が聞こえづらい、めまいがする、全身の倦怠感などの症状を伴うようになると、日常生活にも支障をきたすおそれあります。
違和感が続くなど、気になる症状がございましたら、お気軽に当院へご相談ください。
顎関節症の
主な症状について
1)顎周りの違和感、痛み、
音が鳴るなど
口を開け閉めする際や、食事をする際に顎関節に痛みが出たり、顎関節を動かす咀嚼筋(咬筋、側頭筋など)に筋痛を伴うことがあります。さらに、口を開けた時などにカクッカクッ、ガリッなど、顎関節から音が鳴る場合があります。
2)口が開かない(開口障害)
通常であれば、ご自身の手の人差し指から薬指までの3本を縦にして口に入れることができますが、口が大きく開かない(最大開口量が40mm以下)場合には、顎関節症が発症していると考えられます。
顎から音が鳴る状態から急に口が開かなくなる場合もあり、これは顎関節の関節円板が全法に転位して関節で詰まることで起こるクローズドロックと呼ばれる症状です。その他、顎周りの筋肉や、関節の痛身、顎関節の癒着などが開口障害の原因として挙げられます。
3)その他の症状
睡眠時の強い歯ぎしりや噛みしめ、歯や舌の痛み、のどや顔面の痛み、耳鳴りといったお口周りの問題にとどまらず、偏頭痛や全身の倦怠感、自律神経の不調など全身の健康にも影響を及ぼす場合があります。
顎関節症の分類
Ⅰ型:咀嚼筋痛障害
咀嚼筋(顎を動かす筋肉)における障害です。症状としては 筋肉痛のようなものもあります。
Ⅱ型:顎関節痛障害
顎の関節に痛みを伴う障害です。
顎関節の骨と骨の間にある関節円板を支える組織や、関節包・靭帯という部分に何かしらの問題が起こり痛みを生じます。
Ⅲ型:顎関節円板障害
顎関節の内部構造の動きやずれを主体とする障害です。
「a: 復位性」と「b: 非復位性」の2つのタイプに分けられます。aタイプでは口を開け閉めするときに音がする場合が多く、bタイプでは口を開こうとしたときに途中で引っかかりがあるといった特徴が見られます。関節円板のずれを伴う人は、無自覚の人を含めると人口の3分の1程度存在するとも言われています。
Ⅳ型:変形性関節症
顎関節の骨の変形によって生じる痛みや運動障害です。
このケースでは関節を元の状態に戻すことは難しく、可能な限り症状を取り除くことで運動機能を回復させることが主な治療となります。症状に応じて手術が必要なケースもあります。
顎関節症の治療法
顎関節症は生活習慣病的な部分が大きいため、改善するためには、原因となる悪習癖を取り除くセルフケアを、患者さんご自身に実践していただくことが中心となります。
また症状に応じて、原因となる噛み合せの矯正、薬物療法、関節腔内の洗浄、内視鏡下での外科的手術などの治療を行なう場合もあります。
それぞれの症状やお口の状態に合わせて、的確な診査と診断の上、最適な治療をご提供いたします。
マッサージ・
ストレッチ指導
顎のストレッチを行うことで、関節と顎周りの筋肉の血流を良くし、関節腔内の潤滑成分の分泌を促進します。また、顎関節周りの筋肉の痛みやこわばりの改善を図れるセルフマッサージの仕方などをお伝えしています。
顎関節の整位
顎関節をスムーズに動かすための役割を持つ関節円板に問題があり、口が開きづらいという場合には、適切な力を加えて位置を整えることで改善できるケースがあります。
スプリント(マウスピース)
治療
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりによる顎関節症のケースでは、専用のマウスピースを作成します。マウスピースを装着して寝ることで、顎関節にかかる力を軽減し、歯ぎしりや食いしばりによる過度な負荷から歯を守るなどの効果があります。効果には個人差があり、大きく改善が見られる場合もあれば、ほとんど変わらないケースもあります。
薬による治療
顎関節症による痛みが強い場合や、関節組織の損傷により炎症が生じている場合は、鎮痛消炎薬を処方します。また、 周辺の筋肉のこわばりにより痛みが生じている場合は、筋弛緩薬を処方することもあります。
薬剤関連性の顎骨壊死
(MRONJ,ARONJ)
について
骨粗鬆症の予防・治療に用いる一部の薬や、がんの治療薬として用いる一部の薬の副作用により、顎の骨が壊死する病気が報告されています。
薬剤関連顎骨壊死
(MRONJ)
薬剤関連顎骨壊死(Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw:MRONJ)は、ビスホスホネートなど骨粗鬆症のお薬を使用している方で、喫煙の習慣や歯周病、糖尿病などの要因が加わることでかかりやすくなると考えられています。
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死
(ARONJ)
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(Anti-resorptive agents-related Osteonecrosis of the Jaws: ARONJ)においては、がんや骨粗鬆症の患者さんに投与される「骨吸収抑制薬」によって稀に発症する場合があることが知られています。
これらは、お薬を使用している全ての方が発症するわけではありませんが、MRONJ、ARONJのいずれにおいても発症と重症化のリスクを減らすことが重要です。
当院では患者さんの症状とご状況に応じて、適切な治療方針をご提案しております。発症されていない方に対しても、予防のための指導を積極的に行っておりますので、がん治療中でご心配な方、骨粗鬆症の治療中でご不安な方も一度当院へご相談ください。